遺伝子は「運命」ではありません。自分の体質を知ることで、より的確なケアが可能になります。
DAO酵素をつくる設計図となるのが「AOC1遺伝子」です。この遺伝子に変異(バリアント)があると、生まれつきDAO酵素の産生量が少なかったり、酵素の働きが弱かったりすることがあります。AOC1遺伝子の変異は比較的よく見られるもので、変異を持っていても必ずしも症状が出るわけではありませんが、食事や生活習慣などの環境的要因が重なったときに、ヒスタミン不耐症のリスクが高まると考えられています。
体内でつくられるヒスタミンの分解を担うHNMT酵素にも、遺伝子変異が存在します。HNMT遺伝子の変異があると、脳や気管支などの組織でヒスタミンが蓄積しやすくなり、頭痛・気分の変動・呼吸器症状が出やすくなる可能性があります。AOC1遺伝子とHNMT遺伝子、両方の変異を持っている場合は、より体内でのヒスタミン処理が難しくなるため、症状が出やすい体質といえます。
「MTHFR遺伝子(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素遺伝子)」は、葉酸の代謝(体内での変換)に関わる遺伝子です。一見するとヒスタミンとは無関係に思えますが、MTHFR変異があるとヒスタミンの代謝・分解にも影響することがわかってきています。MTHFR変異はヒスタミン不耐症だけでなく、慢性疲労・うつ・心血管リスクとも関連があるとされており、近年注目されています。葉酸(活性型のメチル葉酸)やビタミンB12の補給が対策の一つとして挙げられます。
現在、民間の遺伝子検査サービス(DTC検査)でAOC1やMTHFRなどの遺伝子変異を調べることが可能です。ただし、こうした検査はあくまで「傾向を知るための参考情報」であり、変異があっても症状が出ない人もいれば、変異がなくても不耐症が起きる人もいます。遺伝子検査の結果を活かすには、機能性医学や栄養療法(オーソモレキュラー医学)の専門家と一緒に解釈することが大切です。「自分の体質を知る」ためのツールとして、うまく活用してみてください。
遺伝子変異があっても、それだけで必ず発症するわけではありません。遺伝的な素因(体質)と、食事・腸の状態・ストレス・薬などの環境要因が組み合わさったときに、ヒスタミン不耐症は顕在化します。これを「エピジェネティクス(遺伝子の発現が環境で変わる仕組み)」の観点から理解することが、現代の予防医学では重視されています。つまり、遺伝子は「運命」ではなく、日々の生活習慣で影響を与えることができるのです。これはアンチエイジングの考え方とも深くつながっています。
遺伝子変異はリスクのひとつですが、環境や生活習慣で影響を変えられます。「遺伝子は運命ではない」という視点が、予防とアンチエイジングの鍵です。